証券口座の相続手続
相続が開始すると、相続に伴って遺産を承継するために、必要なお手続はたくさんありますが、今回は相続手続の中でも特に、証券口座のお手続きについてお話ししたいと思います。
亡くなられた方(「被相続人」といいます。)が生前、株式投資をしていた、という場合。
被相続人が所有していた上場会社の株式も、もちろん相続財産になります。したがって、その承継のためのお手続きが必要となります。
被相続人が、どの会社の株式をどれくらい持っていたか、ということをご家族が完璧に把握していることは、さほど多くはないでしょう。株式投資は、複数銘柄を頻繁に売買することも多いので、投資家である本人でさえも、銘柄とその株式数まで完璧に理解していない、ということも大いにあり得ます。
所有している株式の銘柄は分からなくても、株式の売買に利用していた証券会社がどこか分かれば、その証券会社に問い合わせることで、相続手続を進めることは可能です。問題は、どこの証券会社を利用していたのか不明で、誰に問合せしたらいいのか分からないという場合です。
そんなとき、一体どうしたらよいのでしょうか。
ここで証券口座の基本的な手続きについて、簡単に触れておきます。証券口座の承継手続というのは、銀行口座の預貯金等のように、口座を解約して、例えば株式を現金化して決済する、という方法がとられるわけではなく、被相続人の証券口座にある株式を相続人の証券口座に移管する、という方法をとることになります。
つまり、株式を口座から口座へ移し替えるということをするわけです。証券口座がない場合は、これを新規に開設して移管作業を行うことになります。もちろん、最終的には現金化して相続人ごとに分けることも可能ですが、証券口座の移管手続きのあとの作業となります。
さて、お話を戻して、証券口座が分からない場合に、それを把握する方法についてご説明しましょう。
通常、株式は証券口座で保有し、管理されているはずなので、証券口座を特定する必要があります。
そこで、それを知るためには、「証券保管振替機構(通称「ほふり」)」で、「登録済加入者情報の開示請求」という手続きをするという方法があります。この開示請求をすることで、対象の加入者が口座を開設している証券会社の一覧を確認することができます。
この手続きは、必要書類を用意し、開示費用を収めることで、郵送により行うことができます。最低でもおよそ2週間程度の期間を要するのでご注意ください。
口座を開設していた証券会社が把握できれば、その会社に問い合わせることで、相続手続を進めることが可能となります。
このように、株式は証券口座で保有、管理していることが多いですが、何十年も前から株式投資を行っていたという方の場合、具体的には、株券の電子化(平成21年1月に実施)より前から株式投資を行っていたという場合は、証券口座ではなく、「特別口座」で株式が保有、管理されていることがあります。この場合には、証券会社ではなく、株主名簿管理人(多くの場合、信託銀行等が管理人となっています)に口座が開設されているため、承継手続きの窓口は、その株主名簿管理人となります。
被相続人宛の会社からの株主総会のご案内通知が残っていれば、そこに、株主名簿管理人である信託銀行の記載があることもあり、そこから連絡先が分かることもあります。
ただし、遺産を相続人に分割して承継させるという目的を達成するのは、ここから先の作業が大切で、割と煩雑なお手続となります。もちろん、一つ一つ、順を追って進めていけば、面倒でも必ず完了しますが、それなりの時間と労力が必要となることも事実です。
複数の証券口座をお持ちの場合は、より手のかかるお手続きとなりますので、こうした手続きに自信がない、あるいは忙しくてとても時間が取れない、という場合は、こうした遺産整理手続を森下法務事務所へご依頼いただければ、遺産承継までのお手続きをお手伝いすることができます。
お困りの方はぜひ、森下法務事務所にご相談ください。