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認知症と監督責任

 

  今日は、認知症の介護に携わっている家族や介護事業者の監督責任について考えてみましょう。

 

 

 

 

裁判例では、2007年に愛知県で認知症で徘徊の症状があった91歳の男性が電車にはねられて死亡した事故があり、JR東海が男性の妻(当時85歳)と長男に、振替輸送の費用等およそ720万円の損害賠償を求めたものがあります。

 

 

そもそも認知症ではない場合は、本人が不法行為責任を負うので、配偶者や親族、介護施設運営者が代わりに責任を負うことはありません。

 

 

 認知症で列車事故等をした場合、民法では責任無能力者であると判断される可能性が高く、その場合には、民法713条の「精神上の障害により自己の行為の責任弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者」として、本人は賠償責任を負いません。

 

 

本人が責任無能力と判断された場合には、本人を監督する義務がある者は、監督義務を怠っていた場合は損害賠償責任を代わりに負うことになります。(民法714条)

 

 

この愛知県の裁判では、本人に責任能力がないと判断し、同居と別居の長男に監督義務違反に基づく賠償責任について争われたのです。

 

 

つまり、本人に責任能力があれば、本人以外の者が責任を負うことはありませんが、本人が責任無能力である場合には、親族が賠償責任を負う可能性があるという事になります。

 

 

審は妻と長男の両方に、二審は妻に損害賠償責任があるとの厳しい判決でしたが、最高裁では、「妻と長男に賠償責任なし」との判決が出され、JR東海側の訴えを全面的に退けるものでした。

 

 

 

 

最高裁は、理由として、責任無能力者の保護者や成年後見人あるいは同居の配偶者であるというだけでは法定の監督義務者(民法714条1項)に該当することなく、また、長男を監督義務者とする法令上の根拠がないこと、ただし、法定の監督義務者に該当しない者であっても、その者が責任無能力者の第三者に対する加害行為を防止するために、現に監督行為をしており、しかもその態様等から監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合には、法定の監督義務者に準じる者として責任を負うことがある。との一般論を示した上で、「要介護1」の認定を受けていた妻と別居していた長男のいずれも「現実に監督可能な状況になかった」と指摘し、監督義務を引き受けていたとはいえないと判断したのです。

 

 

つまり、同居の夫婦だからといってただちに監督義務者になるわけではないが、「監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情」がある場合には監督義務者になるとしたのです。

 

 

つまり、この裁判の事例では、妻が要介護認定を受けていること、長男は20年以上別居している事情等を考慮して総合的に判断されているので、認知症患者の介護に関する全てのケースで家族の責任を認めないということではなく、ケースバイケースだということです。でも、監督義務を負うと考えられる場合が、かなり限定的になりましたね。

 

 

2025年には認知症患者は700万人にのぼり65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されています。老々介護が進む中で、認知症患者による交通事故やその他窃盗等の事件も増えています。そのような事件が起きたときに、家族の監督責任がどうなるのかは、決して他人事ではありません。

 

 

 

 

認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。地域ぐるみで認知症患者や家族を支えていく社会が必要ですね。

(※このブログは平成28年9月11日に書かれたものです。)

 

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