認知症と遺言能力(意思能力)
今日は、遺言能力についてお話しします。
遺言と意思能力については、こちらもご覧下さい。
【Q】
父は、家業を継いでいる長男の私に全財産を残したいと話していますが、現在85歳で、多少認知症の疑いがあります。この場合、父の書いた遺言書は有効ですか?
【A】
遺言は、遺言を作成する時に遺言能力(意思能力)が必要です。つまり、自分の行為の結果を理解し、判断できる能力が必要になります。
認知症の疑いがある場合は、医師の診察を受け、遺言能力の有無の判断を仰いだ上で、遺言書を書く事をお勧めします。
では、遺言能力について、少し掘り下げてみていきましょう。
1.意思無能力者
遺言をするには、意思能力が必要なので、意思無能力者の遺言は無効です。 認知症で問題となるのは、このケースです。
2.未成年者
未成年者は、満15歳以上であれば、単独で遺言ができます。満15歳未満の未成年者の遺言は無効です。
3.成年被後見人
成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復した時は、医師2人以上の立会いがあれば遺言できます。
4.被保佐人・被補助人
成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復した時は、医師2人以上の立会いがあれば遺言できます。
認知症の疑いがある場合は、できるだけ公正証書遺言をお勧めしています。 自筆証書遺言の場合は、意思能力の判断資料として、付言事項でどうしてこのような分け方にしたのか理由を書くことをお勧めします。
公正証書遺言の場合は、遺言者は公証人に口述するだけで自書するわけではないので、遺言書作成時点で意思能力があったのか、相続発生後に裁判で争われるケースが多くあります。
そこで、公証人は、認知症が疑われるケースでは、必ず事前に遺言者と面談し、その意思能力の有無を確認します。また、担当医師の意見を聞いたり、その診断書を求めたりして、その意思能力を判断しています。
認知症の簡易な検査として使用されているものとしては、 「改定 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」があります。
これは、自分の名前、生年月日、年齢、現在の場所、物の名前、簡単な引き算等と質問で、30点満点で20点以下が認知症の疑いがあるとするものです。 この検査は誰でもできるので、遺言書作成前にこの検査を受けておくといいと思います。