外国籍の方の不動産登記手続きにおける氏名の表示
日本の国際化は不動産取引にも浸透し、外国の方が不動産取引において当事者となるケースも一般化してきました。かつては外国人による日本の不動産売買について制限はありましたが、現在は撤廃され原則外国の方も日本人と同じように自由に不動産売買をすることができます。不動産の所有権を取得すると登記簿に所有者の住所氏名が記録されますが、登記簿はもともと日本人を対象とした公文書であるため日本語を使用すべきという前提があったため、これまで外国人個人の方が日本の不動産の所有者となった場合登記される氏名の表記は「漢字」「カタカナ」のいずれかとされており、「ローマ字(アルファベット)」等の外国文字を使用することは原則認められていませんでした。
しかし、令和6年4月1日の法改正及び法務省通達により、外国人の方の氏名を「漢字」「カタカナ」で登録するとともに「ローマ字(大文字のアルファベット)」での併記が必須となりました。「漢字」表記のできる中国の方や韓国の方も対象となります。
これは実務上、元来の氏名のカタカナ表記のみではパスポート(旅券)や在留カードに記載されているローマ字での氏名の表記と一致しているのかの確認ができず、登記されている不動産の所有者であることの本人確認が困難であるという問題に対応するためのものです。つまりローマ字表記は所有権の登記事項ではなく外国人所有者の名前を補完する情報として扱われます。
補足事項として登記される表記はローマ字で表音したものに限定され、ローマ字以外の文字や記号による表記は認められません。但し、母国語による氏名にローマ数字が含まれる場合にはローマ字に置き換えて表示することは可能です。ローマ字氏名は原則として全て大文字で表示され、氏名の間にはスペースを入れます。「・」などの区切り記号を用いることはできず、氏名の登記と同様に「氏」→「名」の順に従って登記されます。(例:ジョン・スミス(JOHN SMITH))
なお、所有権以外の地上権や賃借権、抵当権など他の権利にはこの表記は適用されず、外国法人の所有者に関しても適用されません。
ローマ字氏名を証するための書類として、中長期在留者等はローマ字氏名が記載された住民票の写し、短期在留者や海外居住者は有効期間内のパスポートのコピー(有効期間・写真・ローマ字名が含まれているもの)に、原本と相違ない旨の記載と本人の署名または記名押印されたものが必要となります。
外国人の氏名の変更登記を申請する場合にも、上記の申請情報・添付書面が必要となります。従来の「漢字」「カタカナ」登記されていた氏名に、新たにローマ字表記を併記する申出を行うことも可能ですのでご検討・ご確認下さい。