亡父の預金残高がおかしい!同居の兄が使い込んだ?
今日は、被相続人の相続財産である預金についての相談をご紹介します。
【Q】
亡父の遺産分割協議を行うにあたって、父と同居していた兄から預金残高は50万円と言われました。父は質素な生活をしていたので、生前の父の収入や年金の金額から考えると余りにも少額です。
父は認知症だったので、銀行でお金を引き出すことはできません。
兄が勝手に預金を引き出して使い込んでしまったのではないかと思います。調べる方法はありますか?
【A】
お父様の相続人として、単独で、銀行にお父様名義の預金口座の取引経過の開示を請求することができます。
金融機関に対する取引経過の開示請求については、次のような判例があります。
最高裁平成21年1月22日判決(民集63巻1号228頁)
共同相続人は、単独で被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求めることができる。
その理由につき、「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり、他の共同相続人全員が同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」と判示しています。
つまり、預金債権の帰属とは別に、各相続人が単独で取引経過の開示を請求できるという事です。
金融機関は、少なくとも預金債権の消滅時効期間(10年)、会計帳簿等の保存期間(10年)の経過までは会計帳簿を保存しているので、最長で被相続人の死亡前10年間の取引経過の開示を請求できます。
お父様の預金口座の取引経過を取り寄せた結果、例えば、多額の預金が引き出されていたような場合は、お兄様と十分に話し合いをしましょう。
介護のために自宅をバリアフリーに改装したり、お風呂や洗面所、トイレを介護仕様にしたり、介護用のベットや車を購入するという事もあります。まずは、納得がいくまでお兄様とお話し合いをして下さい。
それに納得ができない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をして、調停の中で、お兄様が自分のために使い込んでしまった事を認めれば、これを相続財産に加えて遺産分割の調停を行うことになります。
不正に引き出した事を認めない場合は、民事訴訟(自分の法定相続分について、不当利得返還請求訴訟)で解決する事になります。
上記、裁判業務は、森下法務事務所では行っていないので、提携弁護士の先生をご紹介致します。