法定相続情報証明制度の注意点
今日は、法定相続情報証明制度の注意点についてお話しします。
法定相続情報証明制度の概要と交付の方法については、こちらのブログをご覧下さい。
1.一覧図に全ての相続関係が記載されているわけではありません。
一覧図に載せられるのは、「戸籍から読み取れる情報」なので、戸籍には記載されない事柄は、相続関係にとって大切な事項であっても一覧図に記載されません。
例えば、相続放棄。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切承継しないのが相続放棄ですが、民法では、「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民法939条)」とされていますが、相続放棄を家庭裁判所でしても、その内容は戸籍には記載されないので、一覧図には、相続人として記載されるという事になります。
また、相続欠格(民法891条)によって相続権がなかったとしても、その内容は戸籍には記載されないため、一覧図には相続人として記載される事になります。
胎児は、民法上相続人となります。例えば、父親死亡の際に、母親が妊娠していた場合のお腹の赤ちゃんは相続人ですが、戸籍制度上、出生してから戸籍に記載されるため、お腹の赤ちゃんは相続人であっても、出生までは一覧図には記載されません。
つまり、実際の相続人と一覧図から確認できる相続人と食い違いが生じることがある点には注意しましょう。
法定相続情報の一番下のところに、「当該一覧図の写しは、提出された戸籍の記載に基づくものである」と書かれているのは、上記のような事への注意喚起です。
(なお、推定相続人の廃除(民法892条)があった場合は、戸籍に記載されます。排除により推定相続人は相続権を失うので、排除された相続人の記載のない法定相続情報一覧図を作成する必要があります。)
2.日本国籍を有するものである事
被相続人・相続人のいずれかが日本国籍を有しない場合は戸籍を添付できないので、法定相続情報証明制度を利用することができないので注意しましょう。
例えば、相続人が5人いて、1人だけが日本国籍を有しない場合、その他の4名だけが記載されるわけではなく、相続人のうち1人でも国籍を有しない者がいる場合は、法定相続情報証明制度は利用できません。
3.全ての相続手続きに利用できるわけではありません
相続登記であれば、どこの法務局でも法定相続情報を利用できます。
しかし、銀行等の金融機関での手続き、裁判所での手続き、保険会社の手続き等では、各機関での判断になるので注意しましょう。
各機関での手続き前に、事前に確認しましょう。
法定相続情報証明制度について不明な点がありましたら、森下法務事務所へお気軽にお問合せ下さいね。