居住用不動産の売却許可申立て
認知症などにより判断能力が低下した場合の成年後見制度については、最近広く世の中に知られてきていると思います。
成年後見開始の審判がなされた後、本人の介護費用にあてるなどの理由で、本人の居住用不動産の売却を考えるケースもあると思います。
ただ、成年後見制度はあくまでも本人の利益を優先する制度ですので、本人の不利益になることはできません。
本人の介護費用を捻出するためであっても、居住用不動産を売却することは不利益にあたりますので、家庭裁判所の許可が必要となります。
そこで、後見人によって家庭裁判所に許可を申し立てることに なります。
売却許可の申立てに必要な書類としては、
①申立書、②報告書、③親族の同意書、④売買契約書(案)、
⑤不動産の査定書、⑥不動産の評価証明書、⑦不動産の謄本、
⑧購入者の住所・氏名、⑨本人の戸籍、⑩本人の住民票、
⑪申立人の住民票です。
上記のほか、800円の収入印紙、郵便切手(横浜家庭裁判所の場合、82円1枚、10円1枚)が必要です。
後見監督人がいる場合、意見書も必要になります。
後見開始の申立ての際、⑦⑨⑩⑪を提出している場合、これらの書類は不要です。ただし、変更がある場合は必要となります。
申立ての際には、本人の居住用不動産を売却する理由や、売買代金の使途などを報告する必要があります。
申立てのタイミングですが、売買契約締結前、締結後いずれでもいいようです。ただし、売買金額と購入者が決定してからする必要があります。
また、売買契約締結後であれば、売主・買主が署名・捺印した売買契約書を提出することになりますが、売買契約締結前であれば、売買契約書案を提出することになります。
また、売買契約締結前に申立てをする場合、後日実際に売買契約を締結する際、申立ての際の内容と異なる契約(例えば、売買代金が大きく異なるなど)を結ぶことは困難となりますので、ご注意下さい。
また、あくまでも本人の不利益になることはできないので、不動産の査定書や評価証明書を提出して、正当な価格で売却するか否かを家庭裁判所が判断することになります。
許可の審判がなされると、申立人に通知が来ます。
申立てから許可の審判が下りるまで、2~3週間かかりますので、代金支払期日から遡って、早目に申立てをすることが必要です。