相続人に小学生の子供がいる場合の遺産分割協議
ご相談内容
ご主人Xさんがご病気で急逝され、配偶者である妻Aさんと、小学生のお子様1人が相続人となりました。ご自宅の土地と建物は被相続人であるXさんの名義になっています。
Aさんのお話では、相続財産は目立ったものは土地と建物のみですが、今の自宅は子供と二人で住むには広いので、可能であれば、この家を売って、もう少しコンパクトなマンション等に住み替え、買い替えの差額を少しでも子供の養育費等に充てたいと思っている、とのことでした。
Aさんとしては、この家と建物は妻であるAさんが相続したほうが、家を売却しやすいのではないかと考えていました。
ただし、ここで問題が生じます。相続財産である土地建物をAさん一人の名義にするには、お子さんとの遺産分割協議が必要です。しかし未成年者は民法上、契約を結んだり法的な協議をしたりといった行為能力がなく、自分自身で遺産分割協議に参加することはできません。
また、法定代理人である母親はこの場合、子供たちと利益が相反すると考えられているため、母親が子供を代理することもできないのです。
事務所の対応
未成年者である子供と、その母親との遺産分割協議を行うためには、家庭裁判所に、子供に代わって協議を行うための特別代理人を選任してもらう必要があります。通常は、お母様のご両親やご兄弟などに、特別代理人になってほしいとお願いすることになるかと思います。
Aさんのケースでは、最終的には今の広い家を売却して、もう少しコンパクトなところに住み替えようと考えていたので、遺産分割協議は行わず、法定相続通りに相続登記をしてAさんとお子さんの共有とし、その後、売却をすることにしました。
それでは、母親と、未成年者の子供の共有財産である土地・建物を、売却するという行為をするには、遺産分割協議のときのような家庭裁判所の手続きが必要となるのでしょうか。
遺産分割協議をすることは、母と子の利益が相反するため、母親が子供の代理をすることはできませんが、お二人の財産である家を売却するという行為は、共有者である母と子の利益が相反することはないと考えられており、子供の持分については母親が代理して売却するということが可能なのです。
そして、遺産を法定相続で分けるのであれば、遺産分割協議を経る必要はないので、子供のために特別代理人選任を家庭裁判所に申し立てるといった煩雑な手続きも必要ありません。のちに売却することになった時には、Aさんがお子さんの分も代理して、不動産の売買契約を締結することができます。
まとめ
相続人に未成年者のお子様がいる場合の遺産分割の内容は、財産の内容や、そのお子様の年齢や兄弟構成、ご家族の事情などを、個別具体的なライフプランも考慮しながら、総合的に考えなければなりません。相続税がかかりそうという場合は、税理士にも相談しながら協議を進めていく必要があります。
遺産分割協議をするには、家庭裁判所を通したお手続きが必要になりますが、ケースバイケースで必ずしも協議をする必要はなく、各相続人が法定相続分で相続することで、ご希望がかなえられる場合もあります。
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