把握していなかった相続人の存在
ご相談内容
ご主人(Xさん)がお亡くなりになったということで、相続登記のご相談に見えたYさん。お話を聞いてみると、Xさんの相続人は、妻のYさんと、その子供であるAさんのお2人とのこと。
ただし、相続登記の対象である土地と建物はXさんとYさんご夫婦がご自宅として住んでいたものなので、これらに関してはYさんが相続し、預貯金等を、子であるAさんが相続するように、お二人で決めたとのことでした。
事案の経緯
早速、被相続人であるXさんの出生から死亡までの戸籍の取り寄せ作業を開始したところ、当初把握していた2人とは別に、Xさんの相続人がいることが判明しました。
XさんにはYさんと結婚する前に前妻がいて、Xさんがその前妻と結婚した時に、その前妻にはすでに子供(Bさん)がいたのです。BさんはXさんのもとには来ず、その祖父と祖母に育てられたので生活は別々だったものの、XさんはBさんを自分の養子として戸籍に入れていたのでした。
Aさんは、自分の異母兄弟であるBさんのことは知らず、一緒に暮らしたこともないし会った記憶もないとのこと。ただ、Yさんは、Bさんの存在だけは知っていました。Xさんの葬儀の時に、親戚から知らされたとのことで、Bさんが顔を出していたというのです。
Bさんとしては、子供の頃にことあるごとにお祝いやお金を送ってくれて、大変お世話になった方としてXさんのことを認識しており、親戚を通じてXさんが亡くなったことを知って、葬儀に顔を出してYさんにも挨拶してきたとのことでした。
それはともかく、遺産分割は相続人全員で協議するものなので、当初はその存在すら把握していなかったBさんも加えた計3人で協議しないと効力はありません。
新たに相続人であることが判明したBさんのご連絡先については、Yさんがご親戚を頼りに調べ、連絡を取ってお話をうかがうことができました。Bさんの母親は、Bさんが小さいころに仕事のために上京し、Bさんご自身は、母の実家で祖父と祖母に育てられました。
母親はその仕事先でXさんと出会って結婚し、Xさんからの仕送りが祖父・祖母のもとに来ていたことを、Bさんは子供ながらに認識し、感謝もしていたといいます。
BさんとしてはXさんの養子になった、と聞いたような記憶はあるものの、その後まもなく母親が病気のため他界したので、その後はXさんとの親子関係はなくなったものと認識しており、まさか自分がいまだにXさんの子供として、その相続人となっていることは、思ってもみなかったといいます。
結果として、Bさんは快く協議への参加に協力してくれたため、相続人の総意に基づいた遺産分割協議が成立し、Yさんのご自宅の相続登記は無事に終了しました。
まとめ
被相続人の配偶者やお子さんなどそのご家族が、すべての相続関係を把握されているとは限らず、相続人確定のための戸籍集めの段階で、相続人の誰も把握していなかった新たな相続人が出てくることもよくあります。
相続登記に当たっては、被相続人や相続人のうちお亡くなりになった方については、出生から死亡までの戸籍により相続関係を確認します。
法定相続の場合でも、正確にすべての相続人を把握できないと登記申請はできませんし、遺産分割協議はすべての相続人がそろわないと有効に行うことはできないからです。
相続が開始するとただでさえ不安定な精神状態のもとで、様々なお手続きがいろいろあるわけですが、それでも不動産をお持ちの方は、早めに相続登記の実施に着手しておくことが肝要です。
親身になってお手伝いをさせていただきますので、ご家族だけで抱え込まずに、私たちにご相談いただければ幸いです。